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彼自身も含めて広告業界に身を置く人間は、誰もがコンシューマー・インサイトの体質を身につけていなくてはならないということを指している。情報を発信するためには、受け手の情報を探る必要がある。どこが頭でどこが尻尾か分からないように、発信と受信を循環させながら広告をつくらなくてはいけない。それは広告をつくるというよりも、つくらされていると言ったほうが当たっている。アサヒビールの名誉会長である樋口廣太郎は、「メーカーは大根役者であるべきだ」と述べている。
大根役者は演出家の言うとおり、一生懸命に演じようとする。これはお客さんの意見に基づいて商品づくりをする企業姿勢に通じているというのだ。事実、アサヒのスーパードライは、消費者五〇〇〇人を対象にした市場調査によって最終的な味を決めている。消費者を知ることで、初めて的確なメッセージを発信することができる。企業が一方的に発信しているように見えるメッセージでも、実はコンシューマー・インサイトの結果、そうしなくてはいけない必然性が生まれたから、そうするのだ。
消費者に迫られたら、新しいメッセージを届けていかなければ、その商品の将来は成りゆかないのである。イメージを一新させたメルセデスコンシューマー・インサイトの結果、新しいメッセージが生まれた例としで、メルセデス・ベンツのキャンペーンを挙げることができる。それまでベンツと呼ばれて長くもてはやされていたが、ヤクザのベンツといったイメニージがこびり付いてしまっていた。また、小型車は小ベンツの愛称で呼ばれていたが、この愛称は、コマダムやコギャルといったひねたニュアンスで受けとられていた。
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グラタンやカレーは赤ちゃんの人気メニューだが、これらは高齢者の人気メニューでもある。ところがベビーフードを購入するお年寄りは、孫が遊びに来るから買うのであって、自分たちが食べるために買うのではないと嘘をつく。ベビー用と指定されているものを、何で大人が食べなくてはいけないのか、という心理的抵抗を感じるのだ。
ベビーフードはお年寄りに合った機能と嗜好を十分に持っている食品なのに、それを認めたくない不協和な気持ちが、「私が食べるものではない」と言わせている。しかし、この少子化が進む時代にベビーフードの生産量は一〇年で二・五倍も増えた。メニューも年々バラエティに富んでいくのが実態である。カレイと大根の煮つけとか、けんちん汁といったおじさんが好みそうなものまで用意されているが、いったい誰がベビーフードを食べて、売上げを伸ばしているのだろうか。